私……もう大人なんだよ……

ドクターペッパー、お前と初めて出会ったのは五歳か六歳の時だったはずだ。詳しい場所も、なんでそんな所にいたのかも忘れちまったが、俺はロッククライミングの体験をしていたんだ。まだ足が小さかった頃で自分には大きすぎるサイズの貸靴しかなかったのを覚えているよ。
それでちょっと休憩ということで、そこで売ってるジュースを買うことになった。選択肢は、今思えばふざけやがった選択肢だが、ドクターペッパーと他は炭酸じゃない飲料だけだった。やっぱり五六歳って歳は炭酸が好きだし、お前はコカ・コーラにパッケージが似てやがるから、俺はコカ・コーラだと思ってお前を選んだんだ。
コーラだと思ってコーヒーを飲んだら吐き出しちまうだろうが、コーヒーが杏仁豆腐サイダーに変わっても結果は同じだろう?そんなこんなで出会いは最悪だった。

再会はそれから10年ほども経ってから、俺はシュタインズ・ゲートを観ていて、お前はその中で『知的炭酸飲料』として出演していた。俺はお前のことをすっかり忘れていたから、ドクターペッパーっていう飲み物があるんだな、としか思っていなかった。なにぶん俺の地元の方ではドクターペッパーなんてもんは滅多に見られるもんじゃなかったのさ。
ちょうどそのころ俺は東京を訪れる用があって、そこではドクターペッパーが手に入れやすいということはネットで知ってたから、俺は自販機に陳列された『知的炭酸飲料』を飲んでみたのさ。
脳髄がブッ飛んだね。
小さき日々に覚えた奇妙な味の再来、快か不快か断定は難しい、とても「杏仁豆腐」という言葉だけでは言い表せない独特の風味。俺の記憶は確実に十年前のあの日に還っていた。ただ一つ、あの日の嫌悪が失われていることだけを除いて。

だるいもう疲れた今では知的炭酸飲料にどハマりして3日で1リットルも飲んじゃった、やばいと思うよ。いずれ飽きるのかな、まあ飽き性だしね。関西弁を喋らなくなる日が来るのかな、どうでもいいです。以上おしまい。